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11話
気持ちは急いていたが、地蔵と狛犬がゆったりと構えているからか、祐斗も気持ちを落ち着かせて一緒に石段を下り始めた。
「4の地蔵。お前の話、凄かった」
狛犬は励ますように言って、とんとんとんっと先に石段を下りていく。祐斗はまた、いつ地蔵がへばってもいいようにゆっくりと隣を歩いていた。
祐斗も地蔵の話は凄いなと思っていた。義務だから、役目だからしているのではなくて、他人がしてくれている事をまた他の人にもしたい。自分がそうしたいからしている、そういう思いが伝わってきた。
「嫌でも何でもする事に意味がありますよね。やってみる、自分がそう決めたから…って」
染々と祐斗は呟いた。
「しているうちに嫌な事、綺麗ではない事って出てきます。それから、目を背けて他の事まで見えなくなっては…無意味です」
地蔵はそう言うと、祐斗の腕をついっと引いた。何かと思うと、錫杖を持った地蔵が両手を上げている。ちょうど、子供が抱っこをせがむような感じだった。
「急ぐ。玉奥さんが待ってますから」




