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11話
祐斗は、ゆるゆると首を振ると、まぁ仕方ないかという気分になっていた。嫌だと言うのを無理矢理、引っ張っていっても何の意味もない。むつに任された仕事をこなせなかったのは、がっかりされるであろうが、むつもきっと祐斗と同じように仕方ないかと、他の手を考えようと素早く切り替えるだろうと、思っていた。
暗い廊下を歩き、脱ぎ散らかした靴に足を突っ込んで、爪先をとんとんっと叩いた。
「むつの所に行くか」
「そうですね。お地蔵様走れますか?抱っこは危ないんで、おんぶしますよ?」
「い、いい、大丈夫です。走れます」
「…おんぶして貰えばいいだろ?お前、体力無さすぎ。普段立ってるくせに」
「動かないから体力ないんです」
体力がない事は自覚しているようで、地蔵はきっぱりと言った。だが、何の自慢にもならないし、祐斗としては急ぎたい。ほっといても後から追い付いてくるとは思うが、今、一緒に居るのだからわざわざ別々に行かなくてもいい。




