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11話
はきはきとした喋り方の中に、慈愛に満ちた考えがあり、祐斗はじんわりと心が暖かくなる思いがした。
「わたしは、役目が嫌だと思った事ありませんよ。生きてる方も亡くなった方も同じ、日々という旅をしているのですからね。自分がしたい事出来ないからといって、自身を犠牲にしてるとも思いませんね。わたしは、そこまで生真面目ではないですから。ただ、人を見守る。その人もわたしを見守ってくださってるから、それだけの事です」
にっこりと微笑みながら言うと、地蔵は錫杖を掴んで、よっこらしょと立ち上がった。
「さて、時間を無駄にしました。玉奥さんが心配です、戻りましょう」
地蔵は祐斗の方を見て、少し申し訳なさそうに笑みを見せた。これだけ話しても、他の3人が立ち上がろうとはしないのは、祐斗も雰囲気的に察していた事だ。




