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11話
疲れきっている地蔵を急かすのは悪いと思ったのか、祐斗は地蔵の後ろに回り脇の下に手を入れて立たせると、膝辺りに腕を回してすくいあげた。
「わわっ…な、何を!?」
「あの、すみません。でも、俺もむつさんにお地蔵様を連れ戻すように言われてますから、のんびりしてられないんです。危ないな目にあってるなら、尚更。むつさん体調悪いんで」
早口に言うと、祐斗はじたばたとしている地蔵を落とさないようにと気を付けて、走り出した。くっと笑った狛犬もあとからついてきて、祐斗を追い抜き社務所の前に行くと前足で戸を開けた。祐斗は靴を脱ぎ散らかすと、ばたばたと暗い廊下を走っていき、足で障子を開けた。すぱーんっと大きな音がしたが、そんな事を謝っている余裕もない。
出ていって、突然戻ってきた祐斗に驚いたような顔をしている3人の地蔵の前に、最後の1人をすとんっと下ろした。
急に抱き上げられ走られ、地蔵はへたっと手をついて、荒く呼吸をしている。地蔵としての日々を送っているのだから、人に抱き上げられる事も全力疾走される事もなく、突然すぎる出来事についていけていないようだった。




