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11話
「あの、お地蔵様の言ってるお嬢さんはって言うのは、もしかしてむつさんですか?」
祐斗の手を借りて、ゆっくりゆっくり石段を登っていた地蔵は振り向くと、少し首を傾げるような仕草をした。
「玉奥さんのお知り合いの方、ですか?だからわたしの姿がお見えに?」
「え、えぇ。玉奥は僕の上司です。それで、あの…お地蔵様も他の方同様にお役目を放棄されたって事ですか?」
「そうなりますね。でも、わたしは他の3人を連れ戻す為に離れただけです…」
「よぉ、4の地蔵」
「…狛犬。お元気そうですね」
「まぁ、な。お主まで離れたとなると…何が出てきてるんだ?」
「死鬼です」
石段を登りきり、地蔵は疲れきったように座り込んでしまった。地蔵は神のように突然消えたりして移動するのではなく、自分の足で歩くんだなと祐斗は妙な感心をしていた。




