2話
「でもさ…」
暖かい烏龍茶を一口飲み、溜め息をついたむつは、うつ向いたまま首を傾げた。
「幸せな事じゃなかったんだよね。同じ悩み、力を持った者同士でいても、そこに留まるには、妖を殺めていくしか手段がなくて。必要が…命令があれば人を殺す事もあったって…それが、ツラいって。死んでるのに、生きてるのがツラいって…だから、このまま死なせて欲しいって。だから、あたしは見てた。同じ悩み、力を持ってる悲しい人たちが死んでいくのを。その時ね、思ったの…あたしもこのままここで死にたいなって」
「…えっ」
祐斗が声をあげると、むつはゆっくりと祐斗の方を見た。微笑んでさえいるようなむつの表情に、祐斗は悲しい気持ちになった。
「この、力を持ってる事ってさ、誰にでも言える事じゃない。誰にでも隠し事ってあるけど…勿論、知った上で付き合いを続けてかれてる人も沢山いる。でも、その時は本当に、このまま自分の炎の中で、その人達と一緒にって思った。けど、あの人が来てさ…社長に帰るって約束しただろって、ここに留まってたら次、会えなくなるって…ま、無理矢理連れ出されたんだけどさ。連れ出されたのは、しろにぃも先輩も知ってると思うけど」
黙って聞いている冬四郎と西原は頷いた。2人とも、その場に居たからなのか険しい表情を浮かべている。
「でね、その時…本当に今まで以上に、こんな力、いらない。無くなっちゃえばいいのにって思った。今まで何回もそう思った。力がある事に気付いた時、コントロールが上手く出来なかった時、お兄ちゃんもお父さんもお母さんも、あたしみたいな力ないのに何であたしだけって思ったとき、本当の両親が別に居るって知った時は両親を恨んだ。でも、その顔も覚えてないけど両親が残してくれたの物ならって思って、コントロール出来るようにして受け入れようって思った。でも、やっぱりいらないって思った…普通じゃないって言われたし…」