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11話
「お地蔵様っ‼」
「むつっ‼」
逃げるには間に合わないと判断したむつが、地蔵を庇うように覆い被さると、それを西原が突き飛ばした。地蔵と一緒に突き飛ばされて転んだむつは、すぐに振り返った。声の主、西原の姿が見当たらない。
「先輩っ!?」
鬼の指に潰されて、西原の眼鏡がひしゃげていた。西原は完全に鬼の手の下敷きになっているのか、手足さえ見えていない。むつは日本刀を投げ捨て、手をどかそうと指を掴んだ。だが、指1本でさえもが、むつの腕よりも太くなかなか持ち上がらない。
ぎりぎりっと歯をくいしばり、むつは爪をたてて、何とか持ち上げようとしている。
「んーっ‼」
持ち上がらないと分かると、むつはげしげしっと指を蹴ったが、何の効果もない。鬼は濁った瞳で、むつを見下ろしているだけだった。




