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11話
むつは、ちらっと西原の方を気にはしたが、折角見付けた地蔵をほっておくわけにはいかない。やはり、石像の方が壊れてしまうと、地蔵自体が抜け出してしまうようだった。
「待って!!お地蔵様っ‼」
叫ぶと、声が聞こえてのか大通りに出ようとしていた地蔵は、ぴたっと足を止めた。声が聞こえた事と素直に立ち止まって貰えた事に、むつはほっとして急いだ。
「お、お地蔵様っ…」
追い付いたものの、そんな距離を走ったんけでもないのに息が上がっていて、むつはまともに喋れない。だが、地蔵は糸のように細め、笑みを浮かべたような表情のままで、むつが喋れるようになるのを待ってくれていた。
「はぁ…っ、お、お呼び止めして申し訳ありませ…ど、どちらに行かれるんですか?あの鬼や亡者は、やはりお地蔵様が壊されたから出現したのですか?」
完全に息が整ったわけでもないが、むつは早く答えを知りたいのか、気になっていた事を2つ質問した。




