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11話
身体が大きいせいか、動きは緩慢ではあるが、膝を進めるたびに、ずんっと揺れコンクリートが割れる。
「…友好的にはなれそうにないね」
「今夜の颯介さん、何?いっつもそんな軽口たたかないくせに」
「うん。むっちゃんが言わないから代わりに。緊張感ばっかりじゃ身体の力は抜けないからね」
颯介が肩をすくめて言うと、むつは唇を少し尖らせた。落ちた時にでも切ったのか、血が滲んでいた。むつは舌先で、ちろっとそれを舐めた。
「…確かにね」
「そんな事より、どうする?結局は見逃してくれないみたいだぞ」
冬四郎の言う通り、鬼はずんっずんっと膝立ちのままゆっくりと近付いてきている。




