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11話
意外にも可愛らしい仕草に、むつは少し驚いていた。もっと強気な感じで、やってくるのかと思っていたが、痛みには敏感なのかもしれない。だが、むっとした鬼は再び手を降り下ろした。少し離れた位置に手を下ろして、払い除けるように手を動かした。ぶわっと風が起きると、むつは砂埃に目を閉じた。
ばしっと横殴りに、手が当たるとむつは軽々と飛ばされた。悲鳴を上げる事もなく、むつは公園内の木の中に、突っ込むように落ちた。まだ落ちたのが、木の中だったからか、地面に直接叩きつけられる事はなかったが、ばきばきっと枝を降りながらむつはどさっと地面の上に落ちた。
背中から落ちた時に頭でも打ったのか、むつは起き上がろうともしない。むつが瓦礫を手放したせいで、重たい物を1人で支える事になった西原は、苛立たしげに瓦礫の下の女とむつを交互に見た。瓦礫なんか手放して、むつの所に行きたい所だが、冬四郎が先に行ってしまった。西原の手伝いには颯介がやってきて、ぐいっと持ち上げてくれた。




