2話
だが、祐斗よりも颯介の方が早く冷静さを取り戻したようだった。
「いったい、いつから?」
「遥和さんのホテルに泊まってる時から…少しずつ、かな?」
「あ…」
冬四郎が小さく声をあげると、皆の視線が集まり、慌てたように手で口元を押さえた。
「京井さんは、薄々気付いてたぞ」
「えっ…そうなの?昨日、社長そんな事、一言も言ってなかったじゃん…」
山上が冬四郎に同意を求めるような視線を向けると、冬四郎は頷いてみせた。京井から冬四郎と山上は何かを聞いていたようで、むつはその事に驚いていた。
「…そっか。そう…隠してられるとは思ってなかったけど…」
「でも、何でですか?何で力が使えなくなっなりしたか、心当たりないんですか?」
衝撃から冷めたのか、祐斗が言うとむつは首を傾げた。それは分からないなのか、言うのを迷っているのか、どちらともつかない仕草だった。
「むつ、そっからは俺も聞いてないからな。思い当たる事があるなら、ちゃんと話してみろ」
「…うん」
返事をして頷いたものの、むつはなかなか口を開こうとはしない。力が使えなくなった事より、さらに言いにくい事なのかもしれない。だが、誰も何も急かす事はなくむつが話始めるのを待っている。