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11話
引っ張り出すにも限界があるのか、むつが瓦礫をどけると、がらがらっと破片が落ちた。その音のした方を、鬼が首を動かして見た。音を立てた事で動きを止めたむつは、鬼と目が合うと気まずそうに笑った。
「ばかだ…」
「…優しいのとちょっと周りを見ないで行動しちゃうだけですよ?」
冬四郎の呟きに颯介はフォローを入れて、足元に転がっていたコンクリートのブロックを掴んで鬼に向かって投げた。ごんっと身体に当たると、鬼はぐりんっと首を向けた。
細められた目で睨み付けられたが、颯介はひょうひょうとしている。足がなく立てないだけに、あまり移動も出来ないだろうと颯介は踏んでいた。むつが女を助けだしてから、鬼から距離を取ってしまえば安全だと考えていた。




