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11話
むつは3人に気付かれないように離れて、遠回りをして鬼の後ろに向かっていく。むつが何をするつもりなのかと、3人は下手に動く事も出来ずに見ているしかない。今、下手に動いて鬼の注意をむつに向けさせるわけにはいかない。
コンクリートの瓦礫になっている所をむつは、ひょいっと飛んで、危なっかしくも鬼に近付いていく。そして、瓦礫をどけて下から何かを引っ張り出そうとしている。
「…女を助けるつもりみたいですね」
ちらっと横目に見た颯介が呟くと、冬四郎は舌打ちをした。この状況で、ましてや元凶となった女を助けようとするむつに飽きれているのかもしれない。だが、間違った事をしているわけではない。それでも今はそれをする時ではないだろうと内心では、苛立っていた。
瓦礫の下から見えた腕を掴むと、むつは懸命に引っ張った。女はまだ気絶したままなのだろうか。気が付いてさえいれば、下敷きになる事もなかっただろうし。一抹の望みとしては、鬼を穴に押し込むのを手伝ってはくれないだろうか、というのがあった。




