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11話
灰色の身体をした大きな鬼は、ふうっふうっと牛のように鼻息をつき、ゆっくりと顔を上げた。目は開いているが、黄色がかり濁っているようだった。鬼は両手で、どんっと地面を叩いた。足が浮くほどの振動で、むつはよろめいてブロック塀で背中をぶつけた。
穴から出てきた鬼は、むつたちに気付いてはいないのか、首を反らすようにして空を見上げると口を開けて、おぉぉおっ‼と遠吠えのように叫んだ。びりびりと響く声は、心臓に響くようであって耳が痛くなった。ブロック塀に背中をつけたまま、むつは耳をふさいでいたが、それでも颯介の背中越しに鬼を見ていた。
遠吠えをし終えたのか、鬼は深呼吸をして、ゆっくりと4人が居る方に顔を向けた。辺りを見回すでもなく顔を向けたという事は、最初からそこに4人が居るのに気付いていて、見てみぬふりをしていたという事だ。
「…どう来るかな?友好的であって欲しいね」
「………」
「威圧感半端ないですよ?」
颯介の軽口にむつが答えないでいると、側に居た冬四郎が溜め息混じりに答えた。




