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11話
もう片方の腕を穴から伸ばし、這い上がってきたのは、灰色の大きな男のようであった。地面に膝をつき、上がってきた事で疲れたのだろうか、一息入れているようでもある。
「な、に…あれ」
「何だろうね」
颯介はむつの前に立った。日本刀を持ってはいても、今のむつが戦える状態にないと判断したのだろう。
4人の前に出てきた男は、立ち上がれば軽く3階建ての建物くらいはありそうな大きさに加え、筋骨たくましい。盛り上がるようについた肩に、分厚い胸はボディービルダーのようでもあった。
「鬼?」
呟いた颯介の目に止まっていたのは、太い首の上にある顔だった。口は大きく裂け、尖った犬歯が伸びている。そして、額の部分には太い角が1本生えていた。その様相から、颯介は鬼だと判断したのだろう。




