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11話
ずんっと再び揺れると、ぽっかりと開いた穴からは、にゅっと太い腕が伸びてきた。
「…大きい」
何が出てくるのかと警戒はしていても、予想はつけられなかったむつは、その腕の太さに驚いていた。大人の男の身体くらいは、ありそうな太さだった。その腕が、穴のふちを掴むとコンクリートの道にびきびきっと筋がはいった。
「大きすぎるんじゃないかい?こんなのが外に出て、人に見られでもしたら」
「しばらくは、ニュースになるわね」
「それで済むかな?」
「…済まない」
会話としては軽い調子ではあったが、むつは日本刀を握る手に、じっとりと汗をかいていた。とてもじゃないが、今の自分にどうにか出来るような相手ではないと、はっきり分かっていたからだ。




