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2話
西原が焼酎の入っているグラスとタバコを持って、立ち上がろうとするとむつは、首を振った。
「居て。先輩にも聞いて欲しいから…」
声をかけて貰ったおかげで話す決心がついたのか、グラスをテーブルに置いた。立ち上がりかけていた西原は、むつの顔をじっと見た。むつが頷いて見せると西原は座り直した。
正座をして、少しテーブルから離れて座布団から下りたむつは、颯介と祐斗の方に身体を向けた。
「颯介さん、祐斗。本当は、先に話すつもりで今日、社長に頼んでたんだけど…ごめんね。兄と先輩まで居るとは思わなかった…」
むつは冬四郎と西原にちらっと視線を向け、ふぅと溜め息をついた。だが、颯介も祐斗もそんな事は気にしていないようだった。
「どうせ話すなら、1回で済ます方が、むっちゃんも楽で良いでしょ?気にしなくていいから、冷えるとあれだし座布団に座りなよ」
颯介が優しく言うと、むつはほっとしたように笑みを浮かべたが、その笑みはすぐに消えた。座布団に座り直し、颯介と祐斗の顔を見ている。話すと決めたものの、やはり言いにくいようで言葉を探しているようだ。