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10話
ぐっとバットを握ると、みしみしっと指が少し食い込み凹んだ。スチール缶なら、小指でも余裕で潰しそうな勢いがある。女は何をするつもりなのか、腕を上げた。
「だっ…あっぶねぇ」
びゅんっと猛スピードで折れたグリップの方が、飛んで来るとむつと西原はそれぞれ避けたが、地蔵に当たってしまった。びきっと音を立てて、地蔵の首辺りにひびが入った。
むつと西原はそれを見て、顔を見合わせた。そして、女の方を見ると残りの部分を持ち上げて、すでに投げる体勢だった。ぶんっと空気を切るような音がして、飛んで来たバットは地蔵の身体に見事に当たった。的があまり大きくもないのに、なかなかのコントロールだった。
「お地蔵様が…」
飛んで来たバットは突き刺さると、ぼろっと破片と一緒に地面に落ちた。




