10話
地蔵も土地神も何も言わない。祐斗の隣に座っている困だけが、気遣わしげに祐斗を見て大きく柔らかな尻尾で背中をそっと撫でた。
自分も走り回ったし、むつがなるべく手を借りたくないと言う相手からの助言を得たり、よろず屋の仕事には関わりのない、冬四郎と西原にも昼夜訪わず協力を得ている。沢山の人に迷惑をかけているだけで、したい事をしたいようにしているだけの地蔵に対して、すでに腹が立つだけだった。
どのくらい長い間をそこで立ったまま過ごしてきたのか、祐斗には分からないし、その苦労も想像する事しか出来ない。どんなに嫌で終わりが見えなくても、して行かなくてはいけない事はある。
「…全員が休みなんて取れないんですよ。うちの事務所も4人しかいないし、いい事ばっかじゃないですし…でも、お地蔵様たちみたいにずっとじゃないから。交替で休み取れますからね。人の感じる苦労なんかとは、比べ物にもならないですよね…言い過ぎました。申し訳ありません」
呼吸が落ち着くように、祐斗の苛立ちもおさまったのか、素直に謝ると頭を下げた。それでも、すぐに立ち上がり出ていこうとはしない。地蔵を連れていくという、祐斗の役目はまだ残っているからだ。




