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10話
「女を阻止しようとしたから、むつは死にかけたし、怪我も負っている。それでも、今夜も女と対峙しているぞ」
祐斗の言葉につけ加えるように狛犬が言い、テーブルに残っていた食べ掛けの蜜柑をまとめて口に入れた。ぐじゅっと果肉が噛み砕かれ、甘い香りが漂ってきた。だが、和やかな雰囲気とはほど遠い。
「…うちの玉奥と湯野に何かある前に、お役目に戻って頂けませんか?」
狛犬という味方を得て祐斗が1番言いたかった事を、はっきりと伝えた。地蔵たちは石像に戻ったように、じっと動かずに祐斗を見ている。
「嫌だ」
「嫌だ!?何でですか!?」
ぼそっと呟くように言うと、祐斗がすかさず噛み付くように言った。少し気弱で、消極的な祐斗にしては珍しい。




