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10話
「玉奥?」
「えぇ。玉奥むつという女性で、おれ…僕のアルバイト先の上司です」
「ほぉ、女上司か。女の人の下で働くのは何かと気を遣うんじゃない?大変そうだ」
「いえ…そうでもないですよ」
言ってから、祐斗は首を傾げた。自分は、むつに気を遣ったりしてるだろうかと、考えてしまったのだ。給料日の前になれば、むつは呑みに連れてってくれたり、ランチにも連れてってくれて、当たり前のように奢ってくれる。むしろ、むつの方が何かと祐斗を気遣って、大事にしてくれている気がした。それに、廃病での仕事の時にはすでに能力が使えず、危ない目に遭わせたと泣きながら言っていたのを思い出し、やはり常に気遣って貰っている側だと感じた。
「むしろ、かなり気遣って貰ってます。本当に良い人なんですよ、ちょっと厳しい時もありますけど。それも優しさなのかなって、今なら思えますし」
「へぇ…良い環境で仕事してるんだね」
「それなら、毎日仕事でも嫌んなる事はないか」




