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10話
「あの、それで、ですね…」
祐斗は言いにくそうに、ちらっと地蔵を見た。隣に座ってる狛犬に、ぴしっと尻尾で背中を叩かれた祐斗は、背筋を伸ばした。
「お地蔵様方にはそろそろ役目に戻って頂けないかと思いまして…その、うちの玉奥と湯野が大変な目にあってますし…」
「えー」
言い出しにくい事を頑張って言ったつもりなのに、意外と軽い感じの返事に祐斗は、ぎょっとして声のした方を見た。
「わたしたちには休みがないんだよ。ぽこぽこ毎日毎日、人は死んでいくし?言う事聞かないし?もぅたぁいへーん」
見た目は固い地蔵のようであったが、中身はだいぶんと柔らかいようで、高校生かのような喋り方をしている。もっと重々しい感じになるものだと身構えていた祐斗は、拍子抜けしてしまった。




