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10話
「どうぞ、お入り」
「はい…あの、失礼します」
老人がおいでおいでと手招きをすると、地蔵が少しつめてくれて祐斗が座りやすいようにしてくれた。土地神である老人と地蔵に囲まれるようにして、炬燵には入らずに正座をした。
「お入り。外は寒かったろうに」
土地神がそう言うと、地蔵が炬燵布団を持ち上げて祐斗の膝にかけた。恐縮して、祐斗は土地神にも地蔵にもぺこぺこと頭を下げた。緊張している祐斗を気遣ってか、狛犬が寄り添うようにしてすぐ横にぺたっと座った。
「さて、谷代さん。どういったご用件ですかな?あ、その前にお菓子沢山ありがとうね。地蔵さん方と美味しく頂きましたよ。それに、うちの狛犬にもよくしてくれて本当にご迷惑をおかけしました」
「あ、いえいえ…そんな…こちらこそ、狛犬さんにはお世話になっております」
頭を下げる土地神に、ぶんぶんと手を振って祐斗は答えた。神というのは、もっと偉そうな物だと思っていたが、こんなに低姿勢でこられると困ってしまう。




