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10話
障子を開けたのは10歳前後に見える、小柄な少年だった。一重のしゅっとした目が、少年とは思えないほどに鋭い。そんな目で見上げられ、祐斗はたじろいでしまった。少年は祐斗から狛犬に向けられた。
「戻ったか」
「…偉そうに」
たった一言のやり取りではあったが、とてもじゃないが仲良さそうには見えなかった。少年と狛犬は睨み合っていたが、ほぼ同時にふんっと言って目を反らした。
「谷代祐斗殿ですね。先日は、神社まで送って頂いたあげく、お土産まで沢山ありがとうございました。むつ殿にもお礼申し上げておいてください」
大人びた落ち着いた口調で礼をのべられ、深々と頭を下げられると祐斗もつられたようにお辞儀をした。だが、こんな少年を神社まで送ったり、土産を渡したような記憶はない。
「祐斗、これ我の相方だ。事務所に我の代わりに行った狛犬だ」
不機嫌そうに狛犬が言うと、顔をあげて祐斗は、あっと声を漏らした。事務所に来た時はやけにむつになついていたが、一言も話さなかった狛犬だと思い出したのだ。




