2話
むつの隣に座っている祐斗は、困っているむつを哀れに思ったのか、カルピスチューハイを呑んでから、おかえりなさいと声をかけた。ほっとしたような笑みを浮かべたむつは、ただいまと返事をした。
「それで、どこに行ってたんですか?それに事故ったって…大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫大丈夫。単独だし…ちょっと擦りむいただけだよ」
「病院とかは…?」
「あ、明日行くよ。とりあえず、今日はほら、呼び出した手前、戻らなきゃと思って」
身体が冷えきっているのか、むつは烏龍茶の入ったグラスを両手で持って一口飲むと、ほぅっと息をついた。
「…先に病院だろうが。頭とか外傷がなくても、危なかったりするんだぞ。呼び出したからって、話なんか後日でもいいだろうが」
冬四郎が、じっとむつを睨むようにして見ながら低い声で言うと、目を反らしていたむつは、ゆっくり冬四郎の方を向いて、きっと睨み返した。
「…そう思うなら帰って。あたしは颯介さんと祐斗にだけは、どうしても早く話しておきたかったの」
「お前なぁ、その言い方なんだっ」
「まぁまぁまぁ、みやは口出しすんな。むつ、お前も喧嘩腰に言うな。みやは心配で電話かけたんだぞ?気付かなかったか?」
山上が間に入ると、むつも冬四郎も黙った。むすっとしたままのむつは、鞄を引き寄せて中に手を突っ込んで、携帯を取り出した。画面をチェックして、ちらっと冬四郎を見た。
「運転してて気付かなかった…ごめんなさい」
むつが素直に謝ると、冬四郎は驚いたような顔をした。