2話
「いや、ちょっとな昨日むつから相談を受けて…俺でもどうにか出来る事じゃないからな。他の人の所に行かせたんだ…で、それが遠くてな。山だし…路面が凍結してたみたいで、滑ったらしい。本人は怪我もないって言ってたけど…」
祐斗から生ビールを受け取り、礼を言った西原は冬四郎の前にも置いた。冬四郎は山上の話を聞き、眉間にくっきりと縦ジワを刻んでいる。
昨日、夜遅くにむつから山上に話したという事だけは聞いていたが、どうにかなるような事じゃなかったのか、と思いながらビールに口をつけた。
「怪我はないって…」
はぁと溜め息をついた冬四郎は、祐斗に礼を言ってからビールのジョッキを傾けた。仕事終わりのビールではあるが、美味しくはなさそうだった。
「…あの、むつはバイクで出てるんですか?」
冬四郎は状況を飲み込めないのか、それとも理解が追い付かないのか黙った。冬四郎が黙ると、西原が気になっていた事を聞いた。
「あぁ、朝方からな。スリップして遅くなるとしか言ってないから、大した事はないとは思うが…バイクだからな…」
流石に、バイクで滑って転んだとなれば山上も心配なのだろう。だが、その後むつからの連絡はないのか、どうなっているのか分からないようだった。