2話
戸井の元気な声に迎えられた冬四郎と西原だが、山上たちはまだ来ていないのか、店内はしーんとしている。
「あの、山上さんはまだですか?」
「奥の座敷に…通夜みたいですけど」
奥の座敷に居ると聞き、冬四郎と西原は奥に入っていった。そこには、颯介、祐斗、山上のよろず屋の3人が居た。戸井の言う通り、通夜のような雰囲気で鬱々と3人はビールを呑んでいる。
異様な雰囲気に冬四郎と西原は顔を見合わせた。声もかけにくいが、やってきた2人に3人は顔を上げた。だが、何故かがっかりした様子が浮かんでいる。
「何なんですか…この暗さは」
「むつを待ってんだ。スリップしたらしい…ちょっと遅くなるかもしれないそうだ」
「はぁ!?どこで‼」
冬四郎が驚くと、山上は両手のひらを見せて、まぁ落ち着けとなだめている。西原もどういう事なのか分からず、驚きを隠せないでいる。
「とりあえず、座れよ」
山上に言われ、冬四郎と西原は座敷に上がった。山上の隣に冬四郎、西原と座り、その向かい側に颯介と祐斗が居る。
「…どういう事ですか?」
戸井が飲み物を聞きに来ると、通路側に居た祐斗が生ビール2つと灰皿を頼んだ。戸井はすぐに、暖かいおしぼりと、生ビール、灰皿を持ってくるとすぐに厨房に引っ込んだ。