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2話
颯介が戻ってきて、片付けを済ませると3人は揃って居酒屋へと移動した。颯介も祐斗も何となく緊張したような面持ちでいる。それもそうだろう。むつが話たい事があるから、夜居て欲しいとまで言っていたのだから。余程の事なのだろう。心の準備はいつになったら出来るのだろうかと、祐斗は思いつつ颯介。山上をの後をついて行った。
赤い提灯に暖簾のかかった店の引き戸を開けて入ると、ひょろっとした店長が元気よく3人を出迎えた。
「お、今日は湯野さんと谷代君もご一緒で。お久しぶりです」
「ご無沙汰してます」
「…ます」
颯介にこやかに挨拶するのに、かぶせるように祐斗は、もにょもにょと挨拶をした。気が重たくて仕方ないのだ。そんな祐斗に気付いたのか、戸井はちらっと山上を見た。山上は肩をすくめてみせるだけだった。
奥の座敷に座った3人は、とりあえずといった感じで生ビールと軽くつまめる物を注文した。会話もなく、ビールを呑んでいる3人の暗い雰囲気を厨房から、ちらちらと戸井は気にして見ている。