2話
納得は出来ない颯介と祐斗だったが、むつが戻ったら話すと言った以上は、山上を責めてもどうにもならない。颯介は入っている仕事があるからと、パソコンの電源を入れて仕事の準備に取り掛かっている。祐斗もむつの指示通りに、報告書と請求書の作成に取り掛かっている。
2人が納得しないままではあるが、仕事を始めたのを見ると、山上はほっとした表情を浮かべていた。むつの行き先を知っているのは、山上だけだった。それも山上が、行ってこいと言ったのだ。
夜、話をする場に他にもう2人ほど呼ばないといけないかな、と山上は思っていた。だが、むつに何も言わずにそれをして、むつが話をしなくなると困る。
腕を組んで、うーんと悩んでいる山上を横目に颯介も祐斗も無視して、コーヒー片手に仕事をしている。2人がちゃんと仕事をしているなら問題ないか、と山上は携帯を持って立ち上がった。キッチンに入り、タバコを吸いながら電話をかけた。
「あ、もしもし?悪い、今いいか?…あぁ、ちょっと夜暇ならこっち来て貰えるか?あ、あぁ…いや、俺はお前に用事ない」
山上の声が聞こえてきたのか、ぶはっと祐斗はコーヒーを吹き出した。颯介もくっくっくっと肩を震わせて笑っている。
「はぁー?予定ないんだろ?いいから、来い。あ?…うるせぇ、来いってんだろ。いいから、良いな?場所は、戸井さんの所だ。あ?時間?適当に夜だ、夜。じゃあな」
山上の電話を聞きながら、颯介と祐斗は顔を見合わせた。
「宮前さんだろうね」
「でしょうね」
むつが話たい事があるからと、他にも呼び出すとしたら、2人にはむつの兄である冬四郎しか思いつかなかった。




