2話
祐斗がコーヒーを入れ終わる頃には早くも颯介も出社してきた。背が高く穏やかな雰囲気の、湯野颯介は祐斗の姿を見ると、にっこりと笑みを浮かべた。
「やぁ、おはよう。元気になったみたいだね」
「はい。昨日はありがとうございます」
「うん、コーヒーありがとう」
祐斗からコーヒーを受け取り、一口飲んでから颯介はコートと鞄を置きに、奥の倉庫兼ロッカームールに向かっていった。コーヒーを山上にも渡し、祐斗も鞄と上着を置きに行った。
席に戻ってきた颯介は、斜め前の席に誰も居ない事に気付くと首を傾げて、後ろにあるホワイトボードに目を向けた。今日の日付が書いてある所は、空白になっている。だが、むつは来ていなかった。
「むっちゃん遅刻ですか?」
荷物を置いて祐斗が戻ってきて席に座るのを見た山上は、ふぅと溜め息をついた。
「むつはちょっと出掛けてる…そのうち戻るとは思うけどな。いつ戻るかは分からない。けど、心配はいらないからな。あと、2人とも今夜は暇か?暇なら、ちっと付き合え」
歯切れの悪い説明に颯介も祐斗も納得がいかないのか、じっと山上を見ている。よろず屋の社長であり、最年長者ではあるが、2人からこんな風に睨まれるとたじろぐようだ。
「…分かった。ちょっと待て、な?」
携帯を取り出した山上は、颯介と祐斗に睨まれながらも、どこかにかけ始めた。