1話
現場近くに車を停めて、途中からは2人で歩いて向かった。びゅーびゅーと強い風が吹いており、祐斗は上着のパーカーのチャックを上げて首を隠した。
神社は道路に面しており、近くには民家が点在し、少し先には商店街もある。店は細々とあり、人通りも少なくはないようだ。祐斗は西原のあとをゆったりとついて行きながら、辺りを見回していた。昭和の町並みといった感じがしており、何となく懐かしい感じがするが、祐斗はばりばりの平成産まれだ。
よくある神社といった感じで、石段を登っていくと鳥居があるようだ。祐斗は、この階段の上から突き飛ばされたのかと下から眺めていた。まだ捜査中なのか入れないように、石段の所からキープアウトと書いてある黄色いテープが張り巡らせてある。
「入るぞ」
いつの間にか白い手袋をはめた西原が、テープを持ち上げて祐斗を待っていた。
「あれ、ないんですね」
「あれ?」
「白いテープでここに遺体がありましたって感じで、書いてあったりするじゃないですか」
「遺体はそこの踊り場の所だ。完全に立ち入り禁止にするのに、下からテープ張ったんだ」
成る程、と頷いた祐斗はテープをくぐった。西原に続いて石段を登りながら、祐斗は再び周囲に視線を向けていた。石段の左右は、茶色くなった背の高い草がかさかさと風で揺れている。道路から少し奥に入っていくだけで、しーんとした寂しい感じになっていた。人の気配はなく、寂れた感が漂っている。