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1話
むつが微笑みながら言うと、狛犬はふむふむと頷いた。そして、西原の方に目を向けると、ひくひくと鼻を動かした。
「あ、気付いた?お茶にしよ」
自分の隣をぽんぽんと叩き、西原に座るように促したむつは手を差し出して、テイクアウトしてきた紙袋を受け取った。
「狛犬はホットミルクね。あ、けど飲める?」
紙で出来たカップを取り出して蓋を外すと、狛犬の前に差し出した。くんくんと匂いを嗅いでから、ぺろっと舐めた。だが、まだ熱かったのか睨むようにしてむつを見た。
「まだ熱い?」
カップを両手で持ち、ふぅふぅと息を吹き掛けて冷ましてから、むつはカップを持ち上げて下唇で温度を確認した。大丈夫そうだと確認すると、カップを地面に置いた。
「おい、犬に人が食べる物あげちゃいけないんじゃないか?アレルギー出たりするって言うだろ?」
「…大丈夫だよ」
西原は自分の分のコーヒーを取り出すと、早速一口飲んだ。ほぅっと吐いた息が真っ白く、それだけ外の空気が冷えている事が分かる。