303/753
6話
携帯の小さなライトとは言えど、かなりの明るさがある。むつは携帯のライトで照らしながら、地蔵のあった場所をじっくりと見てから、足元の方にライトを向けた。砕かれてぼこぼことした表面の石が見える。
むつはその表面を指のはらでなぞった。特に何かありそうな気はしなかったが、浮遊霊たちが一様に覗いているのが気になる。にじりよったむつは、携帯をかざして上から光を当てた。
「穴…空いてる?」
眉間にシワを寄せたむつは、携帯をかざしたまま、その黒く小さな穴をそっとなぞった。人差し指が、すっぽりと入りそうな大きさだった。人の手で作られたような、綺麗な形の丸い穴は台座の中にまで続いてるようだった。
意図的に作られた穴が何なのか、興味を持ったむつは、その穴に顔を近付けてみた。光が届いている範囲では何かあるようには見えないうえ、台座よりもさらに深く下まで続いているようだった。
 




