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6話
地蔵の前で膝をついたむつは、壊された地蔵をじっくりと見ている。バットがなくなっているという事は、やはりバットで壊されたのだろうか。むつが止めに入る前も、女は地蔵をバットで殴っていた。だが、やはりあれだけの怪力ならば、バットじゃなくても良いような気がしてならない。
むつは地蔵の周りに集まっている浮遊霊たちも、じっくりと観察していた。最初来た時には、心臓が落ち着きなくばくばくと脈打っていたが慣れたのか、それも無くなり、今では少しだけだが居心地がいいような気さえしていた。だが、やはり他の道よりはどんよりとした暗さと、冷たさが漂っているのは好ましく思えない。
観察されている浮遊霊たちは、地蔵の周りに集まって、その台座をじっと見つめているようだった。そこに何かあるのだろうか。だが、薄暗いせいなのか接着されている足元以外には、何があるのか分からない。
ポケットをまさぐり、むつは携帯を取りだし、持ってきていないペンライトの変わりにモバイルライトを点けた。




