6話
むつは薄暗い道を冬四郎と西原の後に続いて、ゆっくりと歩いた。相変わらず、浮遊霊は多い。だが、昨日とは少し違っている。何にも興味のないように、さ迷ったり立ち尽くしていた浮遊霊たちが、一様に地蔵の回りに集まっている。壊された事に興味を持っているからなのだろうか。いつもと違う事に興味を抱くのは、生きている死んでいるは関係ないのかもしれないが、視える人であるむつに霊たちが寄って来た事はない。やはり何か、霊と地蔵に関係があるのかもしれない。
浮遊霊たちが視えているのは、勿論の事むつだけで、冬四郎と西原は分かっていない。むつは2人の手を掴んで引き止めた。前を歩いていた2人が振り向くと、無言のまま手を引っ張って下がらせた。
「近付かないで、何か変」
どう変なのかと冬四郎と西原は聞きたそうだったが、むつはそれを無視して浮遊霊たちをじっと観察していた。やはり、呼び出されたついでとは言えど来て良かったかもしらないと思っていた。
「ここに、居てね」
冬四郎と西原に言うとむつは1人で、地蔵の前へと向かった。浮遊霊たちが沢山いて、近付けないような気もしたが、生身の身体があるわけではないから、割り込むような事もせずに、ずかずかと突き抜けてむつは、地蔵の前までやってきた。




