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6話
神社の前を通りすぎる時、むつはちらっと石段の上を見上げた。誰も居ないのは分かっていたが、そこに狛犬と土地神が居る事を知っているだけに、気になったのだろう。だが、寄る事はせずに真っ直ぐに地蔵の方に向かった。
「むつ、手袋」
「ありがと。やっぱ先輩ってば、いつも2つ持ち歩いてる?」
「まぁな。予備は必要だしな」
3人は手袋をはめて、黄色いテープをくぐった。周囲には人どころか、車1台も通らない。むつはそれでも、勝手に入る事への後ろめたさなのか、周囲を見回した。関係者である冬四郎と西原は、何も気にする事がないからか、さっさと地蔵の方へと向かっていた。
「ね、バットは?」
「刺さってたやつだろ?あれ、朝方にむつと祐斗君が来た時にはもうなかっただろ?」
そこまで見ていなかったむつは知らないと、首を振った。




