1話
ぎゅっと灰皿にタバコを押し付けて消すと、西原は真剣な顔をしていた。さっきまでの、おちゃらけた雰囲気はもうどこにもない。
「はい。場所が神社でしたし…事件からは数日経ってから変なものを目撃する人が出てきたって事で」
「変なもの?幽霊か?」
「幽霊ですね。視に行きましたけど…確かに居ましたよ。けど、被害者の顔とは違いましたから…タイミング的に重なっただけじゃないかと」
「タイミングか。宮前さんの所の殺人で次がこっちだからな…警察としては同一犯じゃないかって話もしてるからな」
「はい。むつさんも言ってました。西原さんの所も神社だし、関連がある可能性も考えて視るならって」
「そっち方面に強いし、関連性があるなら祐斗君がどっちも担当した方が良いって事か。そこまで考えてるなら、そりゃ山上さんも文句言わないな」
「はい。それで西原さんの所もやっぱり幽霊が出るようになったんですか?」
車内から煙の臭いがしなくなると、祐斗は窓を閉めた。窓を開けていたからか、車内は寒くなっていた。西原が暖房の風量をあげてくれた。
「そうだな。何で神社なんかで殺人が起きるんだろうな。罰当たりだよな…」
「殺されたって、刺されたとかですか?」
「いや、階段から突き落とされたんだ。ついでに、近くの地蔵も壊されてたから、殺人と器物破損だな」
「年の瀬も迫ってるのに嫌な事件ですね」
「あぁ。クリスマスまでには解決させて、今年くらいはゆっくりしたい」
「1人で、ですか?」
「祐斗君、予定ないなら呑みに行こうか」
にやっと西原が笑うと、祐斗は困ったようにふるふると首を振った。西原には何度となく呑みに連れて行って貰っているが、クリスマスまで一緒に過ごしたくはない。だからといって、一緒に過ごす相手は居ないし、その日もバイトだった。