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6話
むつは少し冬四郎の方に、寄り添うようにしている。西原はそれに気付いていたが、あまりむつにくっつかないようにしていた。
「それで、何か気になる事でもあったのか?」
冬四郎も寒がっているむつに寄り添うようにしながら、何でわざわざ夜中に行くのかが気になっているようだった。
「うん…壊されてたでしょ?朝方に視た時は変わりなかったけど、夜は分からないし。また増えてるんだとしたら、お地蔵様と関係あるって断言できそうな気もするし」
「そういう事か。仕事熱心だな」
「かなぁ?」
くしゅんっとくしゃみをして、むつは赤いマフラーで鼻までおおった。寒さのせいで、呼吸をするだけで鼻の奥まで冷えて痛い。
「熱心って言うかさ、今は意地?頼ってくれたりしてくれる人が居るなら、それに応えたいなって…出来るかは分からないけどね」
「出来るさ。むつならな」
お団子にしてある髪を触らないようにか、冬四郎はむつの額あたりを撫でた。後頭部では西原に貰った簪が、しゃらしゃらと揺れている。




