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6話
冬四郎にきっぱり言われるとむつも弱いのか、困ったように唇を噛んだ。そして、ちらっと西原を見た。
「分かったよぉ…一晩泊めてください」
拗ねたような諦めたような言い方で、むつは西原にぺこっと頭を下げた。西原もつられて頭を下げたが、何でそうしたのかよく分からなかった。
「何だよ。別に西原君と寝るんじゃないんだし…そんなに嫌がる事ないだろ?お前ら何かあったのか?たまに2人で呑みに行ってたくせに、2人では嫌だとか…」
言いかけた冬四郎は、何か気付いたのか西原の方をゆっくりと向いた。逆に西原はゆっくりと顔を反らした。分かりやすすぎる反応に、冬四郎は溜め息をついた。
「むつ、泊まるにしても寝る時は俺と一緒に寝ような。西原が何かしてきてもすぐぶちのめしてやるからな」
ぶちのめしてやると言った声が低く冬四郎が、西原に対して圧力をかけているようだった。むつは、くすっと笑って頷いたが、西原はうんざりしたような顔になっていた。




