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6話
「あ、そう、聞こうと思ってたんだけどね」
むつはビールジョッキを傾けてはいるが、全然中身は減っていない。あまり呑む気分じゃないと言っていたが、本当にそうなのかもしれない。
「いつ入れる?お地蔵様の所」
「見たいか?」
冬四郎が聞くとむつはこくりと頷いた。ビールのせいなのか、ほんのりと頬は赤くなっているが、唇は白っぽく顔の血色は良くはなかった。
「…一緒になら良いぞ。明日、明後日には普通に立ち入れるようになると思うけどな。一般道だしな」
「なら、今夜…いい?」
焼酎のボトルを持ち上げて手酌していた冬四郎は、並々と注いでからむつを見た。顔色がいいとは言えないが、真剣な目付きは仕事モードになっている時のむつだ。
「分かった。すぐ行くか?」
ポケットから携帯を取りだし、むつは時間を確認した。まだ21時を回った所だった。
「もう少し遅い時間。出来たら日付が変わる頃がいいけど…それじゃ遅いでしょ?1人で行くから。あ、中には入らないで外から視るだけにする」




