6話
「どっちも何もないと思うよ。この店の中も…あ、うん。ドアの窓から覗いてるのは居るけど、後は居ないよ。あたしに視えるのは居ないよ」
「そうか」
ほっとしたような冬四郎の顔を見て、何かあったんだなとむつは思った。ちひちびとカルピスを飲み、むつは横目に冬四郎を見た。
「…何だよ」
「何があったのかなぁと思ってさ」
「朝、現場検証終わってから仮眠取ったんだけどな。その時、寝惚けてたのかもしれないけど、やけに外が騒がしくてな。でも出てみたら誰も居なかったし…起きてても、そんな事が何回かあったから」
「俺も。トイレがやけに、ざわざわ大勢の声がすると思って覗いてみたら誰も居なかったし、しーんとしてたり。そんなのがやっぱり、何回かあってさ。あげく、宮前さんと回ってる時に2人してそんな体験したからさ…それに、お前言ってたろ?地蔵の所に、霊が沢山居るって。連れて来ちゃったのかと思ってさ…」
「成る程ね。あたしも寝起きにそれあった。寝惚けてたのかなって思ったけど…2人もなら、何か影響出てるのかもね」
しれっとした様子で言い、むつはメニュー表に目を通した。そして、手を上げてぶり大根と芋餅、ビールを頼んだ。
「…呑むのかよ」
「ちょっとだけね」




