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6話
「ごめん、手…それに、約束も破った」
慌てて西原が手を離すと、ひんやりとした空気に触れた手があっという間に冷えていく気がした。むつは、西原の顔と繋いでいた手を交互に見ていた。
「本当、ダメな奴だよな。変なのに絡まれてるのにかっこよく助けられないし、いつも遅くなるし、約束も守れないし」
西原の言う約束が、2人きりでは会わないという事だと分かったむつは、ゆるゆると首を振った。西原は、わりと何でも素直に良くも悪くも言うのにむつはあまり伝えたい事も伝えていない気がした。
「かっこよく助けるが、分からないけど。ちゃんと助けてくれたし、遅くなってもちゃんと来てくれる…って信じてるし…それに、急いで来てくれたんでしょ?少し、息切れしてたから。だから…えっと、え?」
立ち止まった西原は身を屈めるようにして、むつの顔をまじまじと見ている。
「な、何?」
「いや…信じてるって、そんな風に言われると、何かな…うん。良いな、口下手なお前が一生懸命言おうとしてくれてるのって可愛い」
本当に嬉しそうな顔を西原がすると、むつは恥ずかしくなり、少しずつ顔を赤くしていった。




