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6話
むつは西原の袖を引っ張った。くだらない事で喧嘩にでもなれば、西原が責めをおう事は確実だ。
「…行こうか。冷えて風邪引いても困るしな」
ぎゅっと西原はむつの手を握って、先に歩き出した。むつは引っ張られるようにして、とっとっとついていった。駅から離れると、西原ははぁと溜め息をついた。
「ごめん、本当に。この辺でもあんな変なやつら居るんだな…」
「うん…」
でも、ちゃんと来てくれた。それも急いで。だから、いいよと言いたかったが、むつは結局言い出せなかった。
「何もされてないか?」
「え、うん…大丈夫。しつこかっただけで、あたしはずっと黙ってたし」
「そっか。相手にしないのが1番だよな」
西原の手は少し汗ばんでいて熱い。だが、むつは自分から離そうとはせずにそのままにしていた。むつの歩幅に合わせて、ゆっくりと歩きながら西原はあっと言った。




