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6話
無言を貫き、動こうともしないむつの腕を男が掴んで無理矢理引っ張って行こうとすると、急な事にむつはふらっとよろめいた。むつが動くと、してやったりというような顔で、男たちが笑みを浮かべた。だが、ぐいっと反対にむつに引っ張られる形になった男は、驚いたような顔をした。
「どこに、連れていくつもりかな?」
「はぁ?おっさんには関係ないだろうがよ。俺らは1人で待ち惚けくらってるお姉さんと遊ぼうとだな」
むつの腰に手を回して引き寄せた西原は、微かに息を弾ませている。急いで来てくれたんだなとむつは思うと、少し嬉しく思った。むつは、ぱっと男の手を振り払った。
「…毎回、毎回遅くて悪いな。寒かったろ?」
西原はむつには笑みを見せたが、男たちには見下すような冷たい視線を送った。一緒に仕事をした事があっても、付き合いが長くても、こんな顔を見た事がなかったむつは、少し驚いていた。




