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6話
「もしかして彼氏待ち?」
「来ないって言ったら不安そうな顔した。あー彼氏、来ないのか…諦めようよ」
「そうそう。いつまで待ってても仕方ないって」
仕事で来れなくなったなら、それはそれで連絡してくるはずだ。だが、携帯は鳴っていないはずだ。ポケットに入れたまんまで気付かなかったのかもしれない、そう思うと取り出して確認したかったが、男たちの前でそれはしたくなかった。
むつはうつ向いて、唇を噛んだ。男たちのにやにやとした、むかつくような視線から逃げたかった。だが、ここから移動して逃げるのは負けな気がして、そうはなりたくなかった。
ずっと黙っているむつに対して、飽きもせずに男たちはへらへらと笑いながらの声をかけてきている。しつこく、鬱陶しいさに加え毎回、毎回遅い西原に対してと、むつはイライラしてきていた。




