6話
「…分かった。場所は?支度するからちょっと時間かかっちゃうけど大丈夫?」
西原の開き直ったような言いように、むつは少し呆れた。自分の事なのに、少し他人事のようにも感じていた。
『全然、大丈夫。待ってるから…場所なぁ…宮前さん、場所どうします?むつ少し時間かかるみたいですけど』
電話越しに冬四郎の声も聞こえてきていた。すぐ近くに冬四郎が居るのに、会いたいとか冬四郎が一緒だと嬉しくないとか言ったのかと思うと、西原の堂々さにむつは呆れを通り越して、面白いと思った。
『あ、ですね…むつ、ちょっと遠くなるけど…』
合同捜査本部の置かれている西原の勤務している署から、あまり離れるわけにはいかないからと、むつからすると少し遠い場所にはなるが、むつは分かったと言った。
『あ、ちょっと…むつ、俺らまだ会議あるからそんなに急がなくていいからな。電車で来なさい。危ないからな』
西原から携帯を奪ったのか、冬四郎の声が聞こえてきた。優しげで、低く、少しくすぐったくなるような声だった。
「うん…駅ついたらまた連絡するね」
『分かった。気を付けておいで』
「はぁい、お仕事頑張ってね」
『あぁ、ありがとう。じゃあ、また後でな』
通話を終えると、むつはキッチンに居る菜々とこさめの方を見た。




