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6話
むつが鍵を開けて部屋に入ると、菜々もこさめも出掛けているのか、誰も居らず静かだった。だが、ついさっきまで誰かが居たかのような温もりが残っている。
ぼろぼろになった服を脱いで、そのままゴミ箱に投げ入れ、泥まみれの服は風呂場に投げ入れた。下着は洗濯かごに入れて、むつは風呂場で熱めのお湯を頭からかぶった。全身を念入りに洗い、ついでに服の泥も落とした。
ぽたぽたと毛先から滴を落としながら、バスタオルを巻いただけの格好でリビングに行くと、冷蔵庫から抹茶味の豆乳を出して飲みながら、タバコを吸った。
菜々とこさめが居たという温もりはあっても、2人ともここには居ない。居たらうるさいが、居ないとなると寂しい。わがままだなと思うと、自然と笑みが溢れた。タバコを消して、飲みかけの豆乳をそのままにむつは私室に入った。パンツをはいてTシャツをかぶり、髪の毛にバスタオルを巻くとそのままベッドに潜った。枕元には一応携帯を置いたが、鳴る事はないだろうと思っていた。




