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6話
「うっ…いっつ…つぅ…」
唸るような声をあげて寝返りを打ったむつは、いつの間にか自分が寝ていた事に気付くと、ばっと飛び起きた。椅子に座っていたはずだったが、ソファーに寝かされていた。靴も脱がされていて、毛布もかけてある。
「起きたか?」
「あ、社長…もしかして、運んでくれた?」
「俺じゃねぇよ。湯野ちゃんだ」
「そっか…ごめんね、颯介さん。ありがとう…重たかった、でしょ?」
毛布を引き上げて、顔を隠すようにしながらむつが言うと、颯介はゆるゆると首を振った。
「お腹は?社長がたい焼き買ってきてくれたから、食べるなら少し暖めるよ?」
山上がそうしてくれと言うと、颯介はキッチンに入っていった。机から離れてソファーに腰掛けた山上は、毛布を剥ぎ取ってむつの顎に指を添えて顔を上げさせた。




