1話
初々しさのある、ほのぼのラブな感じの2人に通行人の冷ややかな視線が、突き刺さっているが、当の2人はそれにさえ気付かずに、お互いに恥ずかしそうにしている。
「…とりあえず、どっか…あーあ、お茶でもするか?寒いしな、な?」
先に我に返った西原が提案すると、むつはこくこくと頷いた。このまま、この場に居ても仕方がない。駅の近くにチェーン店のカフェがあると西原が言うと、むつは再びこくっと頷いた。まだ顔が赤い。
西原が手を差し出すと、むつは自然と手をつないだ。人の流れに逆らうように西原が先に歩くと、手をつないだままむつは後をついていく。寒さだけではなく顔が赤いむつは、何でそうなっているのかを分かっていながら、繋いだ手を見ていた。そうするとまた恥ずかしくなり、顔が熱くなっていく。
カフェは近く、あっという間についた。西原が先に入ると、むつは手をほどこうとしたが、西原は力をこめるようにして、ぎゅっと握ってきた。空いている席にご自由にと言われ、人は少ない喫煙席のカウンター席に行くと、椅子を引いてむつを先に座らせた。
「…ありがとう。あの、手…」
「ん、あぁ。悪い」