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6話
むつは祐斗を自宅マンションまで送り届け、ゆっくりと休むように言った。そして自分はよろず屋のあるビルに戻ってきた。駐車場に車を停めて、後部座席から荷物を引っ張り出して、疲れた足取りで事務所に戻ってきた。
「たっだいまぁ」
「お、おかえり…ってむっちゃん1人?」
「うん。大変だったし、祐斗は家に帰らせた。とりあえず、事件になっちゃって立ち入れなくなったからね」
まだ眠たいのか、ふぁふぁと欠伸をしながら、毛布や水筒を机の上にどんっと置いて、椅子に座った。
「何があったの?社長もうすぐ来ると思うから…そしたら、報告してくれるかな?」
「うん」
疲れきった顔だし、シャツは破けているし、髪の毛もぼっさぼさであちこち泥だらけなうえ、首には赤く手形がついている。颯介は、余程の事があったんだなと思いつつも、山上が来るのを待つ為にもコーヒーを淹れに立った。コーヒーの匂いが漂って来るようになった頃、むつは机に突っ伏すようにして、くぅくぅと眠りに落ちていた。
「む…お疲れなんだね」
机にコーヒーを置いて、颯介はむつの肩に毛布をかけてやると、そっと離れて自分の席に戻った。




